まずは水道について、とことん掘り下げてみましょう。水道について色々勉強してくださいませ。 知って得する情報があるかもしれません。
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単に水道と聞くと、蛇口から水が出てくるのを想像しませんか。総称として用いる場合、 ちょっと意味が違うと思うのです。水源(河川や地下水)から水をくみ上げて飲めるようにして、 蛇口から出てくるまでと、蛇口から出た水が再び元の水源(河川や地下水)に戻るまでを、 水道と考えることにします。
ここでは、前者を上水道、後者を下水道と呼びます。水道屋と言えば普通この両方を生業としております。
水道法第三条では
この法律において「水道」とは、導管及びその他の工作物により、水を人の飲用に適する水として供給する施設の総体をいう。 ただし、臨時に施設されたものを除く。
と言ってますので、ちょっとややこしいかもしれません。ただこの法律においてと注釈を入れてますので、 あながち、私の考えが間違っているわけではないようです。 上水道の方が先に普及したので普通水道と言えば上水道を想像するものですね。
ここでは、上水道[8]と下水道[9]をそれぞれ見てみましょう。
みなさんが水道と聞いて先ず想像するのがこの上水道です。いつも蛇口をひねるとすぐに飲める水が出てきます。 ご家庭の蛇口に飲める水が出るまでに、どんなことが起こっているでしょうか。
こんなに長い道のりを経て、手元の蛇口に水が出てきます。ご存じでしたか。
蛇口から出た水が、役目を終えて捨てられます。直接地面に捨てられる水も有れば、 流し台から流れていく水や、お風呂場で体を洗った水、そして、人間の体内に吸収されたあと、 尿や糞便となってトイレから流れていくものもあるでしょう。 いったいどのようにして河川に返しているのでしょうか。下流にはその水を汲み上げて、 再び飲み水として利用する人もいるのですから。
これだけの道のりを経て、河川へと返されます。それぞれ施設の全景で説明します。
それでは順を追って施設の全景を見ていきましょう。
原料となる水をくみ上げる水源ですが、これにもいろいろな種類があります。 一般的に良く知られているのが、河川の水です。河川の水は一見豊富に有るように見えますが、 実はそうも行かないことは、夏場のニュースなどでご覧になっていることと思います。 河川の水は降雨量に敏感に反応しますので、降るべき時に雨が降らないと、 河川の水はかれてしまいます。そのため、上流にダムを建設したりして、 河川に流れる水量を調整しているところが多くあります。雨の多いときにできるだけ貯めて置いて、 雨が少ない時期に必要量を汲み上げることで、水源を確保しているというわけです。
次に代表的な水源として、地下水が上げられます。これもニュース番組などでご存じかもしれませんが、 年々地下水が涸れてきて、思うように水量を確保できなくなってきています。 地下水は冬には暖かく、夏には冷たいので、飲み水として重宝されてきましたが、 水道の水源だけでなく、企業の工場などでも無配慮にく汲み上げた結果、 地下水の復元が追いつかなくなって、深刻な状態になってきています。 ひどいところでは、地盤沈下が激しく、水源としてだけでなく、色々被害をもたらしています。
水源から浄水場までの道のりを、原水を運ぶために布設された水道管です。 ポンプなどの動力を使って、浄水場まで送ります。 街の規模にもよりますが、1つの自治体の全ての水を賄うための管ですから、 みなさんの想像を絶するぐらい太い管(たとえば直径2メートル等)を使っているところもあります。 この管は水道の生命線ですから、これが破損したりするとたちまち水が使えなくなります。 各家庭に配る管よりも深く地中に潜っている場合が多いのですが、 老朽化や地震などで破損することも考えられます。考えるとちょっと怖いですね。
原水はたとえそれが地下水でも、いくらかの不要な物質が含まれています。 もちろん毒性をもった不純物が検出された場合は原水として使いませんのでご安心を。 ゴミや、浮遊物、細かい砂状のものなど、また、鉄やマンガンなどがとけ込んでいるものも有ります。 それらから不要なものを排除し飲用に適した水にするために様々な方法で浄水しています。曝気という方法で空気の泡を送り、 鉄分などを酸化鉄に換えて沈殿させたり、薬品を使って不純物を固めたり、一旦水を貯めて放置することで、 細かい砂のような物質を沈殿させたりします。そのあと濾過設備で濾過したあと塩素で滅菌して、 送水管へと送られます。
厚生労働省 水道法施行令第17条の三において塩素消毒の規定があります。
給水栓における水が、遊離残留塩素を〇・一mg/l(結合残留塩素の場合は、〇・四mg/l)以上保持するように塩素消毒をすること。 ただし、供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含むおそれがある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は、〇・二mg/l(結合残留塩素の場合は、一・五mg/l)以上とする。
日本中がO-157で騒いでいた頃、この規定で私の住んでいる街では最大量の塩素消毒をしておりました。 異様な臭気が漂っておりまともに飲めたものではありません。 O-157過が終わった後も放置されたままとなっており、大変不快な生活を強いられておりました。 現在は元の状態に戻っているそうです。みなさんの街ではいかがでしたか。
塩素は危険だと言うことで、塩素消毒を禁止している国も有るようです。日本の場合は法律で決められていますので、この法律がある以上塩素消毒をしなくてはなりません。
また水道法第4条(水質基準)の五で異常な臭味がないこと。ただし、消毒による臭味を除く。
とされており、消毒による臭気は規定からはずれています。
ちなみに、水道法は昭和32年に制定された法律です。
浄水場でできた綺麗な水を各家庭に送るための配水池まで、動力を使って水を送ります。 必要な圧力を得るために山の中腹などに設置してある配水池まで水を送るのですから、 大変な力が必要ですね。浄水場では一日中大きなポンプが回り続けています。 予備も含めて交代でポンプは動いています。フェールセーフを保っているわけですね。
幸い日本の国土はほとんどのところに山があり、傾斜がありますので、 それを利用して自然の重力、つまり勾配を利用して各家庭に水を配っています。 山の中腹で、直径10メートル以上もありそうな、円筒形の施設を見たことはありませんか。 まれに、平野部ばかりの地形では人工的に作った配水塔や、 動力を使って配水している自治体もあります。その分コスト高になりますね。
いよいよここから、私たちの生活に密接に関係する施設です。 住宅の前の道路の地下に通っている管が配水管です、 配水池などの配水設備から網の目のように町中に張り巡らされています。 緊急時に備え、隣り合う自治体とお互いに繋いであることも有ります。 時々緊急漏水修理中などと言って工事しているのを見かけたことがありませんか。 みなさんに安心して水を使っていただくために、日夜保守につとめているのです。
いよいよ家庭に水道の水が入ってきました。前面道路の配水管から分岐され、 普通の家庭では概ね20ミリの口径で引き込まれます。その先には止水栓(元栓)が付けられ、 いよいよ量水器を通って家庭の配管に接続されます。
利用者負担の原則から、公平な使用量を徴収するために設けられるのが量水器(水道メーター)です。 量水器を通るとき中に仕組まれた羽根車が回って、流量を測定します。正確さが求められるものですから、 計量法(施行令別表第3)で8年以内ごとに新しいものに取り替えることになっています。 最近ではほとんどデジタルメーターになっていますので、どなたにでも水量が解ります。 水道料金は1立米(1トン)単位で計算します。お風呂4杯から5杯分くらいでしょうか。 デジタルメーターでも、表示部に1つだけくるくる回るパイロットと呼ばれる回転子があります。 このパイロットは極微量の流水でも検出しますので、漏水の発見に貢献しています。 検針員に、「漏水しているようですが」と言われた経験をお持ちの方も居られるでしょう。 これは、このパイロットで見ているからなんですね。
カランとかタップ等とも言います。ひねると水が出てくる例のアレです(笑) お風呂屋さんで押せば出るタイプの水栓を湯屋カランなどと言います。 トイレのタンクなどで自動的にタンクいっぱいになったら止めてくれる水栓をボールタップなどと言います。 専門用語では水栓というのですが、たくさんの種類があります。 最近ではお湯を使う生活が当たり前になってきてますので、 ほとんどの場所で湯水混合水栓が使われています。 パッキンで止水する通常の水栓から、セラミックディスクをすりあわせて止水する水栓などがあり、 一口に水栓(蛇口)と言ってもいろんなタイプがあることを覚えていてください。何かの役に立つかもしれません。
台所、洗面所、風呂、トイレ、いろんな排水口があります。 トイレにある便器(大小とも)が汚水の排水口でそれ以外は雑排水、もう一つの雨水は、 屋根から降りてくる雨樋などの排水です。このうち雨水を除いて全てに排水口があります。 排水口には一部を除いて、全てにトラップ(直訳すると罠?)が設けてあります。 台所の排水口の中をのぞくとお椀が裏返ったようなものが見えますし、洗面所の下をのぞくと、 S型に曲がった排水管が見えます。どれを見てもわざと水が溜まるようになっています。 「排水管なのにどうして」と思うかもしれませんが、大事な役目があるのです。 一つめは、空気の流れを止める役目です。これは排水管から上がってくる空気を止めることで、 イヤな匂いが部屋に入らないようにしています。 もう一つは排水管内にいる虫(バグ?)などが上がってこないように水深5cmの堀で防いでいるのです。 コンピューターもバグが入るとイヤですよね。洗面所や台所も同じです。:-)
洗面所や台所を流れ出た排水は、家の回りの地下(希に床下)の排水管へと流れます。 通常2%の勾配(1mあたり2cm:下水道法では1%以上とされている。)で道路の下水道本管へと導かれます。 通常、宅内の地下には最大で直径10cmほどの管が布設されており、 それぞれの器具には、それに応じて分岐点から直径を変換して接続されています。 下水道には大きく分けて、分流式と合流式という排除方法があって、現在ほとんどが分流式です。 その違いは、雨も一緒に排除するか、雨とそれ以外の排水に分けて排除するかの違いです。 現在ではほとんど分流式で施工されています。排水管には要所要所にマスが設置してあり、 万が一の時に点検できるようになっています。中にはトラップマスとか防臭マスと呼ばれ、 先ほど説明したトラップと同じ働きをするマスもあります。
宅内排水管と下水道本管の接続点です。直径40cmくらいの大きなマンホールの物や、 直径15cmくらいのものと自治体によってまちまちですが、その役割は同じです。 雨をのぞく家中の排水が全てここに接続されています。通常雨水は道路側溝に接続します。
公共汚水マスと前面道路の地下にある下水道管を繋ぐのが、この管の役割です。 上水道で言う、給水引込管と上下の違いは有れ、家庭と本管を繋ぐ意味で、役割は同じですね。 ほとんどの自治体で直径15cmの管を使って接続しています。
住宅地などでは、直径20cmから25cmの管が使われ、勾配は宅地とは違い0.5%(1mあたり5mm) という緩い勾配で布設されています。宅内の10cm程度の管では考えにくいのですが、 排水量が少ないと管内の水深が浅くなり、勾配が急すぎると、水ばかりが先に流れてしまい、 固形物が残ってしまうと言う現象が起こります。これを防ぐため緩い勾配で布設されているというわけです。 排水幹線とか排水支管と呼ばれる管が張り巡らされていますが、上水道の配水管のように網の目にはなっていません。 ツリー型とでも言いましょうか。ちょうど下流から見て木が枝を伸ばすようなイメージで布設されています。
自然の高低差、つまり勾配で流れる下水道は、一つの都市をすべて自然勾配だけで排水することが難しい場合があります。 例え0.5%ほどの緩い勾配とは言え、数キロメートルに及ぶ距離をまかなうことは通常不可能です。 したがってこの高低差を稼ぐための施設が必要になります。最終処理場(終末処理場)は概ねその都市の一番低いところ、 河川の近くにあるわけですが、それでも高低差が足りないわけです。この辺が上水道とは違うところですね。 そんなわけで、大きな水槽を地下に作り、一旦排水を集めてから、ポンプなどの動力を使って 最終処理場までの勾配がとれる高さまで押し上げてやるわけです。
最終処理場にはいくつかの排水幹線が集まってきます。 入ってきた排水は上水道の浄水場の時と同じようにゴミや砂などを取り除き、今度はバクテリアを使って分解処理します。 酸素が好きな好気性バクテリアや酸素が嫌いな嫌気性バクテリアなどを有効に働かせて処理します。 河川の富栄養化の原因物質である、窒素やリンなども爆気処理などで処理が進みます。 最終的にはBOD(生物化学的酸素要求量)やCOD(科学的酸素要求量)、加えて濁度やスラッジの量などを測定したあと、 消毒をすませて河川に放流されます。この時のバクテリアの死骸が汚泥として残りますが、 この汚泥の処理がなかなか大変なのです。歩道などに敷き詰められているレンガやブロックに混ぜて使われていたり、 陶器の花瓶や傘立て、ツボなどに使われることもあります。
ここまで長い道のりでした、この放流をもって総称して言う所の水道が終わったわけです。 お疲れさまでした。